デッチング

 ノーズギアが降りないにしろ,ギア出し忘れにしろ,海上不時着やポトマック川不時着にしろ,不時着つまりデッチングという事故着陸を想定した,(1)ベヒクル設計や規格が定められ,(2)緊急マニュアルが操縦席備付が定められ,かつ(3)免許取得時や更新時の訓練が義務付けられている,のは航空機(スペースベヒクルを含む)だけであろう。(4)搭乗するたびに乗客には緊急脱出口とライフジャケットの装着教育がうるさいほど告知される,というのもあるし。
 一定範囲の衝突事故を想定して自動車の車体規格や安全装置(エアバッグやシートベルト等)が法律で定められているが,衝突を想定した訓練が定期的に行われているわけでないし,衝突時の取扱説明書があるわけではない。船舶もタイタニック事故から十和田丸事故を経て明石海峡の衝突事故までで明らかなとおり,海上交通の宿命で,衝突事故を想定した船体強度の確保よりも沈没を防ぐ規格(水密コンパートメント)と沈没時の救命脱出装置(ライフジャケットや救命ボート)の備え付けが優先されるだけ。
 実は,飛行機事故は負傷者ゼロでもマスコミのヘッドラインを飾るが,ホントは統計上一番安全なベヒクルで,それを製造段階からの厳密な規格や部品をバラバラにするほどの定期保守点検それにオペレータの毎度の訓練が支えている,ということを広く知って欲しい。