嫌でも入念慎重

 目視検査に一番神経を使う職種はパイロットである(マジ。プリフライトチェックの一つとして出発前の外周検査は目視で行うが、嫌でも入念かつ慎重に行う。それは当然で,目視検査の手抜きで不具合を見逃したら,あとの異常操縦で苦労するのは自分だし,へたすりゃ乗客と共に自分の命で贖うしかないからである。とりあえず路肩に止めてJAFを呼ぶというわけにはいかない。
 三舵のロック外し忘れ,燃料タンク注入口キャップの締め忘れ,ピトー管キャップの外し忘れ……というアリエネー整備不良?で墜落したシップの事故史が頭に叩き込まれていることもある(いま風にいえば失敗学の集積)。事故の歴史がドキュメント化されて教育面にフィードバックされることも大事。もちろん,自分の命がかかった者が目視検査すれば一番いい。
 悪友モタさんは,風貌に似合わずw神経が細かい。以前に急遽コパイとしてランナップさせてもらったとき,私が「おまえさんのシップだから,主翼がねじれてるw」と口をすべらせたら,コンタクト(エンジンスタート)直前なのに外周検査のやり直しに飛び出し,とうとう左右の翼内燃料バランスが若干悪いことを目視で見付けてしまった。そして,「お前さんの目視も存外役に立つな,あんがとよ。」とお礼まで言ってきた。オントップになってからだが,「異常がなかったら,おまえさんに文句を言おうと思ったが,当てが外れたよ。」とボソっと言ってきた。私の口は災いの素が多いが,これは例外の福の神。