生産圧力
定時運行(運航)と納期厳守(整備)は,航空機搭乗ユーザの要望でもある。吹雪で遅れたり欠航したという不可抗力のときですら,発券窓口で強硬なクレームを受けることからも分かる。ステアリングやレンチを握る現場でも,それはヒシヒシと感じる。日本のユーザは鉄道並みのスケジュールどおりの運航を求めるからである。
それが,運航の安全と整備の徹底との間で,トレードオフになることもある。要するに安全を脅かすプレッシャーともなるからである。さすが運航面は,レギュレーションが超ド級に細かくて厳しいから,小説の中のパイロットと違って,生産圧力に負けて危険な運航に赴くランボーパイロットにお目にかかったことはない。実は整備部門もそうなのである。少なくともレンチを握る現場では詳細は整備マニュアルにしたがって行われているからである。細かいバグは黙っておいて「エイヤ」でソフトウエアを発売する心理状態になることはない。
ただ運航や整備の事務部門では,そうはいかないのかも知れない。最近の整備看過は,全てAD*1やTCD*2のコンピュータ登録ミスという単純作業ミス(転記ミス)から生じている。昨今の人員削減とコストダウンが,安全に関する事務部門の労働過密からくる生産圧力になっていないのといいのだが。