デムパ論文作法

 恩師に教わった逆をやればよい。逆がギャグというオジンぎゃぐ。

1.キツネ目の文章
 論者を攻撃できても権威は攻撃できない,という妄想に由来する。二言目には「マクルーハンが言ったように……」「米国憲法の権威ブランダイス判事が主張する……」を随所に盛り込む「虎の威を借る狐」作戦である*1。うまくいけば,あなたも今日から「砂漠の狐」ともてはやされるだろう。このとき狐は狸に負けたはずなどと迷わないことが肝要である。
2.カタカナ外国語の多用
 フツーの言葉をカタカナ外国語で書けばいいから簡単である。日本人に親しんだ英語よりもフランス語やドイツ語の方がもっといい(ウソがばれ難いから)。しかし,マイナーすぎる言語だと逆に信用性が低くなるから,せいぜい国連公用語に留めるのがよいだろう。ただ,よりハッタリを効かせようとしてカタカナでなくアルファベットで書くなら,よく知らない言語は慎重に。スペルや用法を吟味しないと,その言語の専門家から強力な突っ込みが入るので留意されたい。
3.公知は論証不要の幻想
 論拠や典拠が見つからなくても慌ててはいけない。そのときは,米国独立宣言に書いてあるように「自明の真理として……」と書けばよい。よく使われるのは,「広く知られているとおり……」「……が一般的なのですが」「周知のごとく……」「……とよく言われますが」「……には異論がありませんが」「……という現状では」などである。これにツッコミが入ると大抵反論できないので(ウソだからw),そのときは,「人間は努力する限り間違うものであるぞ。」*2を引用して逃げよう。
4.長文化
 文章は長ければ長い方がよい。複文重文使い捲くり戦法である。文と文の切れ目に「。」を入れてはいけないから常に「が,」を多用する。「が,」に飽きてきたら「〜ところ,」でもいい。簡単に文を長くしたいなら,単語・句・文の末尾に「(……)」という「入れ子」で別の文をねじ込めばいい。ねじ込む文は,語句説明,条件付け(インデントしてIFの羅列),例外の説明(「ただし,〜は別だと思うのですが。」の類)がよい。この道を究めたいなら「入れ子」に「入れ子」を重ねることである。なお,マルカッコに飽きたら「−−○〜○−−」というダッシュや,脚注を使えばいい。
5.難解語の多用
 フツーの専門用語を多用してはいけない。その道の専門家から速攻で突っ込みが入るからである。しかし,難解語のテクニカルタームだと,その道の専門家の間でも定義や用例に議論があるから,突っ込みが入る危険性が低くなる。また,業界が異なれば意味自体が異なってくるものならカモネギである。たとえば「〜性」「〜系」「〜主義」「〜イズム」というものなら,何を使ってもダイジョーブである。突っ込まれても「貴方の業界(学会)と私の用法は異なっている。」で常に逃げられるからである。しかも,適当な言葉がなければ,最後に「性」「系」「主義」「イズム」をくっつけば,お手軽にでっち上げ一丁アガリである。

*1:ゲーテなんかは始終引用されるから「ゲーテは何でも知っている」という迷文ができたほどw

*2:ゲーテファウスト」原文317頁……早速利用w